NSTとは
NST:Nutrition Support Team (栄養サポートチーム)の略です。
1970年頃より米国にて、中心静脈栄養の開発・普及に伴い、多職種で栄養管理を実践・支援するチーム医療の必要性が認識されるようになり、本格的な活動が始まりました。
日本は30年遅れて、2000年に入ってから徐々に浸透し、現在では1,300以上の施設が稼働しています。(JSPEN)
30年遅れをとっていた日本では、知る人ぞ知る、東口髙志先生により、欧米型の専属チームにとらわれないNSTの運営システム” Potluck Party Method(PPM:持ち寄りパーティー方式/兼業業務システム)” が考案されました。
東口髙志先生の著書はこちら。
とにかく勉強しました。
今はこちらの本も名著です。
早くに設立
私は2000年に入職し、NSTの情報は知っていたものの、新人すぎて動けずにモヤモヤしていました。
2003年頃、柔軟な思考とすぐに行動にうつす若きクレバーな消化器内科医が移籍してきて、私の病院管理栄養士キャリアに明るい光が差し込みました。
2004年頃には、日本でも早い時期に、NST活動を開始しました。
設立当初、そのNST医と担当看護師長とで、当時、東口髙志先生がNSTを稼働していた、三重県尾鷲市にある、尾鷲総合病院に実習に行かせて頂きました。
東口先生は、あのフィッシャー比(BCAA/AAA)を算出された、フィッシャー教授の教え子であり、英語もペラッペラ、イケメンで、学会等でもたくさん学ばせて頂きました。
専門資格
NSTは、医師・看護師・薬剤師・管理栄養士をはじめとする、各職種がNSTの専門講習を受けて、資格を取得します。
この4職種が資格取得していないと、正式なNSTの稼働は認められず、診療報酬を得ることができません。
代表する資格は、
「日本臨床栄養代謝学会」の『NST専門療法士』です。
指定のセミナーを受講し、他施設の実地実習を受け、試験に合格してから資格が取得できます。5年更新であり、知識のアップデートや、症例を積み重ねる必要があります。
輸液や経腸栄養の選定や、水分や栄養管理の評価、血液データの評価など、臨床栄養の幅広い知識と技術を習得する必要あります。
私は、
「日本病態栄養学会」の『NSTコーディネーター』と『栄養専門管理栄養士』の資格も取得しました。
このように、各専門職でNST担当者は、臨床における栄養管理について、さらに専門性を高めています。
なぜ必要なのか
病気の治療は、栄養状態が良好でなければ、よくなりません。ほとんどの事例で、栄養状態が良ければ、治療効果は上がり、逆であれば下がります。
病院に入院してくる高齢者の方は、そもそも栄養状態が悪い方が多いです。(自宅での骨が見えるほどの褥瘡発生や、痩せすぎなど。)
日本は飽食ではなく、栄養の質低下が著明な方も多くいることが実情なのですよね。
また若くても、病気や手術などの治療中には、栄養状態が悪化したり、食欲が落ちたりすることがあります。NSTは、各専門職の専門性を活かし、患者さんの状態に応じた栄養管理プランを立て、適切な輸液や経腸栄養プランや、食事療法、栄養補助食品の提供、栄養素のバランス調整などを行います。
また、食事に関する相談や、食事に対する不安を解消するサポートも行っています。NSTの存在により、患者さんの治療効果や生活の質の向上が期待できるのです。
活動内容
栄養状態が悪いと、治療効果が悪い、入院期間も長い、リハビリができないなど、患者さんやご家族にとっても、辛いものです。
各病棟の各専門職で情報共有をして、栄養状態が悪い患者さんには、すぐにNSTが介入するシステムがあります。
NSTとしては、週に1度、医師・看護師・薬剤師・管理栄養士、そしてリハビリセラピストなどが、スタッフステーションに集まり、診療録(電子カルテ)の記録や情報をもとに、現時点での問題点や改善策を提案し合い、実際に患者さんを訪れ、お話しをしたり身体の評価を行います。
「フィジカルアセスメント」、脱水や皮膚の状態、筋力、傷の状態、そして患者さんの活気、食欲、本当の気持ちなど、全ての情報は現場にあるので、患者さんとの対話を最も重要としています。
それらの積み重ねが、栄養状態の改善だけではなく、退院後のQOL(生活の質)向上につながります。
病院管理栄養士「給食管理」か「臨床栄養」か
病院の管理栄養士業務は、主に2つに分かれます。
「給食管理」と「臨床栄養」ですね。
もちろん両方する必要もありますし、どちらかがメインになる場合もあります。
私は、「臨床栄養」が大好きだったし、やりがいもあったので、自己研鑽を積み重ねることができました。
病院でもチームプレイが大切!
病院での栄養サポートチーム、「NST」についてご紹介しました。
どの仕事にも、どのチームスポーツにも言えることですが、個人が自分がもつ能力や専門性を高め、チーム一丸となり、チームプレイが機能することで、最大限の能力が発揮されます。
病院では、職場の雰囲気が良好になり、スタッフ同士の信頼関係や協力関係も築かれます。病院で働くスタッフは、それぞれが一人ひとりが重要な役割を担っていますが、お互いの役割を尊重し、協力して仕事をすることが大切だと思います。
それこそが、『患者さんやご家族の安心や信頼につながる』のだと。
以上、参考になれば幸いです