
日々のケアの現場で、ふと自分の心が置き去りになってしまうことはありませんか?
2026年7月末に、看護師・介護士・ケアマネジャーなど医療介護福祉に携わる皆さま向け「ケアする人の悲しみ — 支える人が支えられるために —」というセミナーを開催しました。
当日の温かい対話の様子や、参加者の皆さまのリアルな声をご紹介します。
なぜ今「ケアする人の悲しみ」なのか?
医療や介護・福祉の現場では、日々利用者さまやご家族に寄り添う中で、スタッフ自身の心も大きく揺れ動いています。
- 「もっとできたのではないか」
- 「何もしてあげられなかった」
- 「なぜこんなにあの人のことが気になるのだろう」
こうした感情は、決して「プロ失格」や「弱さ」ではなく、一人ひとりと誠意をもって深く関わってきた大切な証です。
しかし現場では、「専門職だから」「仕事だから」とその悲しみや葛藤を表に出せず、気づかないうちに心身の疲弊や抱え込みにつながってしまうケースが少なくありません。
さらに、一見「ホスピタリティが足りない」「気が利かない」「指導が伝わらない」といった意欲や資質に見える問題も、実は言葉にできない疲れや、共感し続けることによるエネルギーの枯渇(コンパッション不足)が原因になっていることがあります。
本セミナーでは、個人の資質不足として捉えるのではなく、「疲弊のサイン」として見立てを転換し、チームで支え合う視点を育むことを目的にプログラムを構成しました。
セミナーの構成(90分)

第一部:ミニレクチャー(30分)
ケアする人の心の揺れを解き明かす6つのテーマについて講義を行いました。
- ケアする人の悲しみとは(喪失感は軽視されやすく、積み重なると不調へ)
- 共感疲労と抱え込み(共感力が高い人ほど陥りやすい心身の消耗)
- なぜ距離感は揺れるのか(「2.5人称」の適度な距離感と揺れに気づく専門性)
- コンパッションの枯渇とチーム機能への影響(疲弊を個人の問題にせず組織で支える)
- 「2.5人称」の関わり(親身でありながら、一歩引いて見るバランス)
- 支える人が支えられること(ケア者自身もケアされるべき存在)
第二部:参加型ワーク・ロールプレイ(60分)
「なぜ志したのか」という初心の振り返りからスタートし、それぞれの悲しみや葛藤の共有、そして「お互いに気づき、声をかけ合うチームづくり」についてグループで熱い対話が行われました。
参加者の声(アンケートより抜粋)

研修終了後、参加者の皆さまから心に残るメッセージや気づきを多数いただきました。その一部をご紹介します。
1. 自分の感情や「セルフケア」に向き合う気づき
- ケアする人は本当に自分のことが後回しになっていると感じました。これからは自分と向き合いながら心の健康を保っていきたい。そうすることが利用者やスタッフへの気遣いにも自然とつながると思います。
- 自分のケアや機嫌をとることが周りにとっては大事なんだと気づきました。それが一番難しい課題ですが、セルフケアの輪が広がれば、より良いケアの提供につながると感じます。
- 悲しかったことがあまり思い当たらず『自分はおかしいのかな』と思っていましたが、自分を大切にしないと相手への思いやりも不足してしまうのだと改めて思いました。
2. 「支える人が支えられる」ことへの共感と深まり
- 在宅や施設での看取りの際、張りつめたものがあり『自分は支える側だ』と思い込んで支えられることに慣れていなかったのかも…と気づきました。支え、支えられる安心感をチームで持てるってステキだなと感じます。
- 『支える人が支えられること』奥が深い言葉でした。自分自身を認め、他人も受け入れる。改めてこの職を選んで良かったなと自分で自分を褒めたいです。
- 『私自身、人を支えることは無理(力量がない)と感じているけれど、実際には支えられているから今がある』と気づけました。
3. 現場で明日からできる「声かけ」と「チームづくり」
- 『早よ帰った方がいいよー』『そこまで煮詰まらんでもええよー』という仕事帰りの何気ない一言が嬉しい。自分が元気だからこそ、他者を思いやる余裕が生まれるのだと実感しました。
- バタバタして喉がカラカラな時、誰かが一言を出してくれると救われる。その雰囲気をつくるのはリーダーだけでなく、一人ひとりのスタッフなのだと知りました。
- 『話せる人はいいけれど、話せない人にどうアプローチするか』が大切。『今日の服すてきだね』といったちょっとした会話から『自分のことを見てくれている』と感じてもらえる関係をつくっていきたいです。
- とても良い研修でした。自分の施設でも実践してみようと思います!
■ おわりに
ケアの現場において、「ケアは一人で背負うものではなく、支え合うもの。ケア者自身も、ケアされる存在である」という視点は決して甘えではなく、ケアの質と持続可能性を高めるために不可欠なものです。
参加者の皆さまが、ご自身の心の声を聴き、お互いに「大丈夫?」「ありがとう」と言い合える温かい職場環境をつくっていく一助となれば幸いです。
ご参加いただいた福祉会の皆さま、真摯にワークに取り組んでいただき、本当にありがとうございました!


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