Not Doing, But Being.
この言葉は、病院管理栄養士時代から、ずっと心にある言葉です。
Not Doing, But Being. 〜何かをするのではなく、ただそばにいる〜
近代ホスピスの生みの親である シシリー・ソンダースが遺した言葉です。
私はこの言葉を常に、尊敬する緩和ケア医から聴いていました。
私たちが、常に立ち戻る言葉でした。
医療現場は基本的に、Doing(する)です。
能動的に、検査をする、治療をする、手術をする、食事を提供する、ケアをする。
でも本当に大切なのは、Being(ある)。
患者さんのそばに存在し、ただ傍にいて、耳を傾け、その人その人を受け入れる。
Doingでは届かない場所に、
Beingだから届くものがある。
それが、私がこの言葉を大切にしている理由です。
“支える立場にあるすべての人”に共通するテーマ
例えば、
友人ががんの闘病をしているとき、
兄弟姉妹がパートナーを亡くしたとき、
親の介護を続けるとき、
子どもが学校に行けなくなったとき。
私たちは「どうにかしてあげたい」と願います。
でも、できることが見つからない現実の前で、
無力さや罪悪感に押しつぶされそうになることもあります。
そんなとき、
「Not Doing, But Being.(何かをするのではなく、ただそばにいる)」
という言葉を、思い出していたいのです。
「何もしなくていい」
「ただ、そばにいるだけでいい」
そう言われても、最初は少し戸惑うかもしれません。
何かしていないと、愛していないような気がしたり、
支える資格がないように感じてしまうから。
けれど、そばにいるということは、
“何もしない”ことではなく、
“相手の存在をまるごと受けとめる”ということ。
言葉にならない痛みを、
沈黙ごと抱きしめるように聴く。
涙も、怒りも、何も言えない時間も、
そのままそこに置いておく。
それだけで、人は少しずつほどけていくのだと思います。
存在が、もっとも深いケアになる

人を支えるというのは、
行動することよりも、
相手の世界に静かに居させてもらうことかもしれません。
相手の苦しみを変えることはできなくても、
その苦しみの中で「ひとりではない」と感じてもらえる。
その小さなぬくもりが、
ときにどんな言葉よりも、人を生かす力になる。
だから私は、この言葉を信じています。
Not Doing, But Being.
それは“何もしない”という優しさではなく、
“そこにいる”という、いちばん深い愛のかたち。

